居小屋つくり

白炭の窯場には少なくとも2つの小屋が必要です。一つは窯の前(窯庭と言います)に作る窯小屋と、窯の近くに作る炭焼き小屋です。白炭は、黒炭のように一窯で大量に焼くことができませんので、回転で勝負します。冬に野良仕事のできない雪国では窯場に泊まり込み、付きっきりで焼いていました。そこで、炭焼き小屋が必要になるのです。南国長崎で焼く場合にも、窯出しのタイミングが思ったようにいかないと真冬に徹夜で窯出しなどということにもなるので、できれば小屋はあったほうがよく、僕はこれを居小屋と呼んでいます。

 親方から習ったときは、炭焼き小屋は、「束建て(つかだて)」窯小屋は「叉手建て(さすだて)」の小屋組みをしていました。理由はたぶん、炭焼き小屋は壁を付けるので、それには束建てのほうが都合がよいことと、壁を打ち付けることで、筋交いなどの斜め材がなくとも安定するからだと思います。しかし構造上叉手建てのほうが頑丈なので、私は居小屋も叉手建てにしています。

 私は親方から習いましたが、その後どこかで見た明治時代に書かれた毛筆書きの炭焼指南書にも、図面付きで掲載されていました。そこでは、ねそと言って、灌木や蔓で縛って組むように書いてありましたが、その技術を持たない私はなまし番線を使っています。釘やかすがいを使わず建てられるのも大きな利点です。

 独特の構造でしかもとても理にかなっているので、ご紹介します。

左の写真が、叉手建て小屋の構造です。一番の特徴は棟木を支える叉手を桁からではなく、柱の根本から立てていることです。それにより筋交いの働きを持たせることができるので、とても丈夫になります。小屋を建てようとされている方は参考になさってください。

完成するとこんな感じです。